第 3 話 book は「書き残す」

book は「本」、「予約する」

ねこさん
なにをしているの?
あかり
好きな作家さんの画集を見ているの。
ねこさん
すてきだね。
あかり
ずっと見ていて飽きないわ。
ねこさん
そうだ。画集で思い出した。
あかり
なあに。
ねこさん
「本」は英語でなんて言うかわかる?
あかり
book でしょ。
ねこさん
あたりだよ。
あかり
それくらいならわかるわよ。
ねこさん
book の名詞の意味は「本」だよね。
あかり
そうね。
ねこさん
じゃあ、book の動詞の意味は?
あかり
え? 動詞? なんだったかしら。
ねこさん
さあさあ。
あかり
えーっと。
ねこさん
あと 10 秒ね。
あかり
ちょ。ちょっと待って。ここまで来てるの。
ねこさん
3、2、1、はい。時間切れ。
あかり
あ! 思い出した! 「予約する」ね。
ねこさん
おお。あたりだよ。
あかり
急には出てこないわね。
ねこさん
たいしたものだよ。
あかり
そういえば。book には少し嫌な思い出があるのよね。
ねこさん
そうなの。
あかり
最初は book は「本」だと覚えてたの。
ねこさん
うん。
あかり
ある日、「予約する」という意味もあると知って、とまどったわ。
ねこさん
ふむ。
あかり
だって、意味がぜんぜん違うじゃない。
ねこさん
たしかにね。
あかり
そういうのが積み重なって、英語が苦手になった気がするわ。
ねこさん
そうかあ。
あかり
語源でなんとかなったらいいのにね。
ねこさん
なんとかなるかもね。
あかり
え! ほんと!

なぜ book は「予約する」を意味するのか

ねこさん
book の語源は「書き残す」なんだ。
あかり
書き残す。
ねこさん
「書き残されたもの」でもいいよ。
あかり
「本」は、「書き残されたもの」ということ?
ねこさん
そうそう。
あかり
じゃあ。「予約する」は?
ねこさん
レストランへ行ったら混んでたとするじゃない。
あかり
え? うん。
ねこさん
「ここに名前を書いてください」という紙が置いてあるのを見たことない?
あかり
あ。そういうお店あるわ。
ねこさん
そこに名前を「書き残す」よね。
あかり
書き残すわ。
ねこさん
それは、レストランの席を「予約する」ことだよね。
あかり
言われてみればたしかにそうね。そういうことなの?
ねこさん
そういうことなのだろうね。book にはほかにも「帳簿」という意味があるんだ。
あかり
ちょうぼ?
ねこさん
帳簿は商売の取引を記録したものだね。お金をいつ、誰からもらって、誰に渡したかが「書き残されたもの」だ。
あかり
あ。お父さんがそんなことをやっていたような。帳簿ってそういうことね。
ねこさん
そういうこと。まとめると、「本」は「書き残されたもの」だし、「予約する」ことは名前を「書き残す」ことだし、「帳簿」はお金のやりとりが「書き残されたもの」だ。
あかり
ふむふむ。覚えられた気がするわ。

なぜ book は「書き残す」なのか

ねこさん
ちなみに、なぜ book が「書き残す」を意味するかというとね。
あかり
理由があるの?
ねこさん
book の語源は「ブナの木」も意味するんだ。
あかり
ブナの木?
ねこさん
そう。昔の人はブナの木に文字を「書き残した」ことに由来するようだよ。
あかり
そうなのね。
ねこさん
いろいろある木のなかで、ブナの木なのはおもしろいね。
あかり
きっと昔の人にとって、文字を「書き残す」のに身近な存在だったのね。

book の入った英文

ねこさん
最後に book が入った英文を紹介しよう。
あかり
うん。
ねこさん
Tom is in Mary's good books. はどんな意味だと思う?
あかり
えーと。「トムはメアリーのよい本の中にいる」?
ねこさん
そうだね。
あかり
でも、変な日本語ね。
ねこさん
book の語源は「書き残す」だったね。
あかり
ええ。
ねこさん
じゃあ、「書き残す」ととらえてみるとどうだろう。
あかり
えーと。「トムはメアリーによく書き残されている」。
ねこさん
そうだね。
あかり
なんだか少し自然になったような。
ねこさん
この英文はね、「トムはメアリーのお気に入りさ」という意味なんだ。
あかり
そうなのね。
ねこさん
心に「よく書き残されている」ということは、「お気に入り」ということだね。
あかり
なんだかすてきな表現ね。

みちくさ

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