第 1 話 英語を学ばないといけなくなった!
その日は突然やってくる
あかり
あ。ねこさん。
ねこさん
なんだい。あかり。
あかり
お散歩してるの?
ねこさん
そうだよ。今日は天気もいいし。
あかり
ところで、ねこさんは英語はできるの?
ねこさん
あかりよりはできるよ。
あかり
ちょっと嫌味な言いかたね。
ねこさん
なんだい。そっちから声をかけておいて。ぼくは散歩でいそがしいんだ。じゃあね。
あかり
あ! 待って!
ねこさん
のわー! …足を引っぱらないで欲しいな。転んじゃったじゃないか。
あかり
ごめんね。もう手を離したわ。ゆるして。わたし困ってるの。
ねこさん
やれやれ…。にぼし持ってる?
あかり
え?
ねこさん
にぼし。
あかり
持ってるわ。
ねこさん
持ってるんだ。
あかり
うん。だから話を聞いて。にぼしあげるから。
ねこさん
しかたないな。なんの話だい。ぼりぼり。
あかり
英語の話よ。さっきも言ったじゃない。
ねこさん
そんな口を聞いていいのかな。散歩に行っちゃうよ。
あかり
あ! にぼしはもう一本あるわ。
ねこさん
それで、英語のどこに困っているの? ぼりぼり。
あかり
ぜんぶ。
ねこさん
ぜんぶ。
あかり
うん。もう全部ね。英語を勉強していると、いつの間にか寝ちゃってるわ。
ねこさん
じゃあ、やらなければいいんじゃない?
あかり
そうも言ってられないのよ。最近、生き別れのお兄ちゃんと再会して家族ともども暮らすことになったんだけど、お兄ちゃんが英語しかしゃべれないの。
ねこさん
え? なんだって?
あかり
だから困っているのよ。
ねこさん
ちょっと展開についていけないかな。
あかり
実際そうなんだからしかたないじゃない。わたしもびっくりよ。
ねこさん
そうかい。じゃあ、その現実を受け止めることにしよう。
あかり
ぜひそうして。
ねこさん
お兄さんと話すために英語ができるようになりたいんだね。
あかり
そうよ。でもわたし、英語ができないから…。
ねこさん
それはいい話だね。さっきは足を引っぱったくせに。
あかり
え。なんか言った?
ねこさん
いや。なんでもない。そういうことなら協力するよ。
あかり
ほんと! うれしい!
どうやって英語を学ぼうか
ねこさん
英語はどれくらい苦手なの?
あかり
なにもかも、ね。
ねこさん
apple は?
あかり
リンゴでしょ。それくらいならわかるわ。
ねこさん
company は?
あかり
えっと、「会社」ね。
ねこさん
astronaut は知ってる?
あかり
アストロ? え?
ねこさん
あかりの実力がだいたいわかったよ。
あかり
ほんとかしら。
ねこさん
まあ、だいたいね。学校でテストはやってるの?
あかり
単語のテストがあるわ。でもすぐ忘れちゃうの。
ねこさん
ふだんどうやって単語を学んでいるの?
あかり
ノートにひたすら書いているわ。apple とか company とか 10 回ずつ書いたりして。つらいのよね。意味を感じないわ。
ねこさん
意味がないと感じてやるのはつらいね。話は変わるけど、あかりは雑学は好き?
あかり
好きだと思うわ。
ねこさん
それはいいね。じつは英単語にも、いろいろな雑学があるんだ。
あかり
え。そうなの?
ねこさん
そう。たとえばさっきの company の話はおもしろいよ。
あかり
おしえておしえて。
ねこさん
じゃあ。にぼしをひとつ…いや。ふたつもらおうか。
あかり
ええい。みっつあげるわ。
ねこさん
ぼりぼり。じゃあ。ぼりぼり。話すよ。ぼりぼり。ぼりぼり。
あかり
食べ終わってからでいいわ。