第 2 話 company のおもしろ話

英単語はバラバラにできる

ねこさん にぼしおいしかったよ。
あかり それはよかったわ。
ねこさん なんの話だっけ。
あかり company の話よ。
ねこさん そうだったね。そもそもね。英単語ってバラバラにできるんだ。
あかり え。バラバラに?
ねこさん そう。たとえば company は、com と pan と y といった具合にね。
あかり カム、パン、イー、そんなふうに分けられるのね。知らなかったわ。
ねこさん com とか pan とか、それぞれを「語源」と呼ぶんだ。
あかり ごげん。
ねこさん そして、語源には、一つひとつに意味があるんだ。
あかり そうなの。
ねこさん たとえば com は「一緒に」という意味があるよ。
あかり 一緒に。
ねこさん たとえばコンビネーションって combination って書くんだけど、これにも com が入ってるよ。
あかり コンビネーションって、コンビのコンビネーション?
ねこさん そうだね。
あかり ふーん。…あ!
ねこさん わかってきた?
あかり なんとなくね。コンビって二人でやるものでしょ。「一緒に」やるものだわ。
ねこさん そのとおり! あかりにしては察しがいいね。
あかり えへへ。ピンとくるとたのしいわ。あと余計なことを言われた気はするけどまあいいわ。
ねこさん com が入っている英単語は combination の他にもあるんだ。コラボレーションとかね。英語では collaboration と書くよ。
あかり そっか。コラボレーションも「一緒に」やるものね。
ねこさん 一人でコラボレーションはできないよね。「一緒に」やる相手がいるのが com のイメージだ。
あかり あれ。でもちょっと待って。collaboration には com は入っていないわ。co までは一緒だけど。
ねこさん するどいね。実は com も co も同じ語源なんだ。
あかり そうなの。
ねこさん あとに続くつづりによって、語源のつづりが変わることがあるんだ。
あかり ふーん。
ねこさん 発音のしやすさで変わったりね。
あかり co が入ってたら、「一緒に」ってこと?
ねこさん 基本的には、そうであることが多いよ。そうじゃない時はあるんだけど。
あかり あてまらない時もあるのね。
ねこさん 数学の公式みたいにブレがないならわかりやすいんだけどね。英語は複雑な過程でつくられた言葉だから、そうはいかないこともあるんだ。
あかり そうなのね。
ねこさん とはいえ、ひとつの語源は、複数の英単語に応用できるから、効率よく学べるんだ。
あかり おもしろいわ。
ねこさん それはよかった。
あかり ところで company の com はわかったけど、pan は何なの。まさか「あんぱん」のパンじゃないでしょうし。
ねこさん おや。するどいな。pan は「あんぱん」のパンだよ。
あかり え! そうなの!

pan はあの「パン」

あかり あんぱんってどういうことよ。
ねこさん そのまんまの意味だよ。
あかり pan は食べるパンってことなの。
ねこさん そうだよ。
あかり でも、company は「会社」でしょ。パンっぽくないわ。
ねこさん 「一緒にパンを食べる」って考えてみたらどうかな。
あかり 「同じ釜の飯を食う」みたいな感じかしら。
ねこさん ああ。いいたとえだね。そんな間柄から「仲間」というイメージが生まれたんだ。
あかり company は「仲間」ってことなの。
ねこさん そのとおり。
あかり 仲間、かあ。
ねこさん 言ってみれば、「会社」は、何かを実現するための仲間があつまっている場所だよね。
あかり うんうん。まだ働いたことないけど。
ねこさん ちなみに、company を「仲間」という意味で使うこともあるよ。
あかり そうなの。
ねこさん たとえば in company with は「誰かと一緒に」を意味する熟語なんだ。
あかり なるほど。
ねこさん company は「会社」だと思い込んでしまうと、in company with は理解しにくくなるね。
あかり それよそれ。同じ英単語なのに別の意味があると、嫌になるわ。
ねこさん あきらめて別々に覚えよう、ってなっちゃうよね。
あかり でも、ほんとうは根っこの部分でつながっているのね。
ねこさん そう。「仲間」という根っこのイメージをつかんでおけば、いっけん別に見える意味が頭にすっと入るわけだ。
あかり すごいわ。ちなみに、company の最後の y はどんな意味なの?
ねこさん y はちょっと特別で、最後にくっついて名詞をつくるはたらきがあるんだ。
あかり そうなのね。じゃあ、意味が変わるわけではないのね。
ねこさん そうだね。英単語のイメージそのものには影響しないよ。
あかり わかったわ。

ヨーロッパの歴史との意外な関係

ねこさん company はまだまだおもしろい英単語なんだ。
あかり なになに?
ねこさん company は、「一緒にパンを食べる」ことから「仲間」だったよね。
あかり ええ。
ねこさん じゃあ、なんでパンだと思う?
あかり 言われてみると。
ねこさん 食べものはたくさんあるよね。
あかり パンじゃなくてもいいわね。クッキーだっていいわ。
ねこさん にぼしだっていいよね。
あかり ちょっと。よだれが出てるわよ。
ねこさん 実はね。パンであることに意味があるんだ。
あかり パンに意味があるの?
ねこさん 『最後の晩餐』って知っているかい。
あかり えーっと…。たしか、キリストの絵よね。
ねこさん そう。イエス・キリストと弟子たちが食事をしている風景が描かれているね。
あかり パンと関係があるの?
ねこさん そこで彼らが食べているものがパンなんだ。
あかり え! それでパンなの。
ねこさん イエスは十字架にかかる前の日に、「パンは自分のからだで、ワインは自分の血である」と言ったと、新約聖書に書かれているよ。
あかり パンは特別なものなのね。
ねこさん こんなふうに、宗教は、けっこう影響しているんだ。
あかり おもしろいわ。
ねこさん もう少し歴史の話を続けよう。大航海時代って知ってるかい。
あかり なんとなく。
ねこさん 15 世紀から 200 年ほど続いた時代で、ヨーロッパの人々がアジア、アメリカ、アフリカへ船を出したんだ。
あかり いろんなものを探しに行ったのね。
ねこさん そうだね。大航海時代は英語で The Age of Discovery だから、文字どおり発見を求めに出たわけだ。
あかり ふむふむ。
ねこさん 当時の航海はとても危険だったんだ。食べものはいつ尽きるかわからないし、航海は一年を超えることがあった。
あかり 想像もしたくないわ。
ねこさん 船員たちは生き死にを一緒にする仲間だった。そんな彼らのことを、当時は company と呼んでいたんだ。
あかり company って、仲間のつながりが本当につよい言葉なのね。
ねこさん そうなんだ。ちなみに、weather って英単語があるじゃない。
あかり うん。お天気のことね。
ねこさん そう。名詞では「天気」を意味するけど、実は、動詞の意味もあるんだ。
あかり そうなの。
ねこさん 動詞では「困難を乗り越える」を意味するよ。
あかり ずいぶん違う意味なのね。
ねこさん 一見そうなんだけど、どうやら大航海時代と関わりがあるようなんだ。
あかり 気になるわ。
ねこさん 「困難を乗り越える」意味は、「船で嵐を切り抜ける」ことから来ているんだ。
あかり え。それって。
ねこさん そう。危険をともなう、大航海時代の航海が連想されるね。
あかり ふえ〜。
ねこさん weather が「困難を乗り越える」意味を持ったのは 1650 年頃だとされるのだけど、それって、17 世紀のなかばまで続いた大航海時代とかぶるんだよね。
あかり なんだかもうすごいわ。
ねこさん おもしろいでしょ。
あかり ええ。とっても。きっと weather には、嵐の苦しさや、乗り越えてきた誇りが込められてるのね。
ねこさん きっとそうだね。人が船をつくって、嵐の中の困難を乗り越えていなければ、weather が「困難を乗り越える」という意味は持たなかったんじゃないかな。
あかり 言葉をつくった人の気持ちが感じ取れるみたい。
ねこさん さらに言うとね、company はまれに「軍隊」を意味することもあるんだけど、ここまでの話を聞いていれば、その意味は自然と頭に入ってくるんじゃないかな。
あかり 「軍隊」は「一緒に」戦う仲間だものね。
ねこさん そういうこと。
あかり わたし、感動しちゃった。語源って、共通した部分があって、ちょっと応用がきくのかなくらいに聞いていたけど、思ったよりも深くておどろいているわ。
ねこさん 英単語を語源で学ぶと、歴史を知ることにもつながるんだ。にぼしを噛めば噛むほど味が出てくるように、語源を知れば知るほどいろいろなことがわかってくるんだ。
あかり ちょっと。よだれが出てるわよ。

みちくさ

次のおはなし

しばらくお待ちください。

目次

  • 第 1 話 英語を学ばないといけなくなった!
    • その日は突然やってくる
    • どうやって英語を学ぼうか
    • 次のおはなし
  • 第 2 話 company のおもしろ話
    • 英単語はバラバラにできる
    • pan はあの「パン」
    • ヨーロッパの歴史との意外な関係
    • みちくさ
    • 次のおはなし
  • 第 3 話 シンプルな英単語でも奥が深い
    • なぜ book は「予約する」を意味するのか
    • 同じように cut を考えてみる
    • みちくさ
    • 次のおはなし
  • コラム 語源は漢字の部首に似ている
  • 第 4 話 教育と education
  • 第 5 話 アニメーターは魂を吹き込む職人
  • 第 6 話 数を表す語源
  • コラム 語呂あわせと語源は似たようなものなのか
  • 第 7 話 終わりを意味する fin
  • 第 8 話 いろいろな色を表す語源
  • 第 9 話 目うつりしちゃう advertisement
  • コラム 語源は万能なのか
  • 第 10 話 星に願いを
  • 第 11 話 音で感じる英単語の不思議
  • 第 12 話 言葉の源はどこにあるのか
  • 最終話 ふりかえって
  • 語源をもっとたのしみたいあなたへ
  • おわりに
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お知らせ

【2018/08/20】『よく出る語源一覧』を追加しました。語源には、よく出るものとそうでないものがあります。よく出る語源から学ぶと手っ取り早いです。そして掲載語数が 2,000 語になりました。さらに 2,000 語の表現を全体的に見直しました。


【2018/07/21】掲載語数が 1,900 語になりました。約 300 語の語源の説明をすべて書き直しました。読みやすく、わかりやすくなっていればさいわいです。


【2018/04/23】掲載語数が 1,800 語になりました。『語源の広場セミナー』を始めます。

語源のつぶやき

骨単 ギリシャ語・ラテン語
なんと骨の部位の英単語を語源で解説している本です。こうしてみると、医学用語は複雑なものが多いので、語源で学ぶことは強力な武器になりそうです。シリーズで、肉単や脳単もあります。