おもしろ語源
今まで調べてきて特に面白いと感じた語源をご紹介します。
company の pan は食べられる「パン」
pan はまさかの食べられる「パン」なのです。com が「共に」を意味するので company で「一緒にパンを食べる仲」となり、そこから「仲間」や「友達」といった意味が生まれました。日本語でも似た発想の言葉に「同じ釜の飯を食う」があります。ご飯を一緒にする仲は「仲間」です。company は「会社」も意味します。「会社」は事業を一緒に成し遂げる「仲間」が集まる場です。語源を知っておくと一見違った意味も共通する発想から生まれるのだとわかります。ちなみに company と companion「コンパニオン」はつづりが似ています。これらも同じ語源です。
海とマリネ
「海」を意味する英単語は marine です。marine はローマ字読みをすると ma、ri、ne で「マリネ」です。料理の「マリネ」を思い出します。海とマリネ、どちらも実は同じ語源です。「海」に沈めるように食材をひたす料理法が「マリネ」です。
「マリネにする」を意味する marinate なんて英単語もあります。
アルバムとアホウドリ
アルバムとアホウドリは、どちらも「白」が共通しています。
アルバムは「白い」本に写真を貼っていきます。アホウドリは「白い」鳥です。
albumen は見慣れない英単語ですが、「卵白」を意味します。これにも alb が含まれています。ちなみに「卵白」をもっとかんたんに表現したいときには egg white と言えます。
インフルエンザとインフルエンサー
特に冬場に気をつけなければいけない伝染病にインフルエンザがあります。そして、ニュースで時々耳にする、「影響力のある人」を示す言葉にインフルエンサーがあります。インフルエンザとインフルエンサーは音が似ています。実は同じ語源なのです。
星に関する語源をもうひとつ。語源 aster は「星」を意味します。disaster は「災害」を意味します。語源 dis は「離れる」を意味します。占星術で、災害は「星」から「離れる」と起きると考えられました。
こうして星に関する語源を眺めていると、星への恐れと期待を感じます。
語源 aster を含む英単語には astronaut もあります。astronaut は「宇宙飛行士」を意味します。宇宙飛行士は「星」へ飛行するために訓練された人です。astronaut は長めで覚えるのが難しい英単語かもしれません。わたしはなかなか覚えられない英単語に出会うと、別の表現で言い換える練習をするようにしています。たとえば a man who goes to space などと「宇宙へ行く人」を表す表現ができるようにしておきます。そうしておくと、とっさに astronaut が出てこないときでも対応できます。
malaria は「悪い空気」
インフルエンザのほかの伝染病にはマラリアがあります。マラリアのつづりは malaria です。malaria の語源は mal「悪い」aria「空気」です。malaria という言葉ができた当時は、悪い空気から感染する病気だと考えられたようです。現在では研究が進み、ハマダラ蚊に刺されることで感染するとわかっています。
パソコンの中で悪さをするソフトウェアのことをマルウェアと呼びます。マルウェアを英語にすると malware となります。malware にも「悪い」を意味する mal- が含まれています。
book は「書き残す」
英単語の book は名詞で「本」を意味します。book には動詞の意味もあり、それは「予約する」です。「本」と「予約する」には何か関連があるのでしょうか。さっそく語源を調べてみます。
book の語源には「書き残す」意味があります。意味と語源を照らし合わせると、「本」は「書き残した」ものであり、「予約する」ことは泊まる場所に名前を「書き残す」ことです。さらに book は「記帳する」を意味します。「記帳」は日々の商売の取引を「書き残す」ことです。このように book の根幹は「書き残す」だととらえると、book の多様な意味が頭に入りやすくなります。
book の語源には「ブナの木」の意味もあります。ブナの木といえば世界遺産である白神山地を思い出します。ブナの木は頑丈で、現在では家具の材料としても使われています。古代の人々が文字を書き残す際にもブナの木が使われたとされます。きっとブナの木は身近な存在だったのだろうと思えます。
Tom is in Mary's good books. この英文の意味を考えてみましょう。英語をそのまま訳すと「メアリーのよい本の中にトムが入っている」となります。もう少し自然な日本語にしたいところです。book の語源は「書き残す」でした。それをふまえると「メアリーのよい本としてトムが書き残されている」と読み解けます。もっと自然な表現にするなら「トムはメアリーのお気に入りだ」となります。本も心も残るもの。そんな想起をさせる詩的な表現だと感じます。
gala は「ミルク」
「銀河系」を意味する英単語 galaxy には、語源 gala が含まれています。gala は「ミルク」を意味します。きらめく銀河系の星々を、流し込まれるミルクに見立てたようです。
練乳やミルクに含まれる成分にガラクトースがあります。ガラクトースを英語にすると galactose となります。galactose には gala が含まれています。
host と hostile
英単語の host は「主人」を意味します。「主人」は「客」をもてなします。英単語の hostile は「敵意をもつ人」を意味します。「敵意」は「敵」に対する意志です。host と hostile はそれぞれ「客」と「敵」を表す正反対です。しかし、host と hostile の語源は一緒だと考えられています。
host と hostile の語源をさかのぼると「見知らぬ人」を意味します。外から訪ねてきた見知らぬ人は「客」か「敵」かはわかりません。このことから正反対の意味の言葉が派生したのだと解釈できます。
メソポタミア文明とカバ
メソポタミア文明とカバには「川」が共通しています。
メソポタミア文明は語源のとおり、チグリス川とユーフラテス川の「2 つの川の間に栄えた文明」なので、語源を覚えておくと地理も覚えていられます。
bed は「土を掘った眠る場所」
「ベッド」を意味する英単語 bed の語源は「土を掘った眠る場所」です。「土」が起因しているのか、bed の派生語には地学の言葉が見受けられます。
bedding は地学の「成層」も意味します。「成層」は「積み重なって層になること」です。土がどんどん積み重なって「寝かせられる」さまから連想したのでしょう。
同じ語源から派生した英単語に bedded があります。これも地学の用語です。
happy と happen
happy と happen には同じ語源 happ が登場します。
happen に -ing が加わるとハプニングです。
ファクシミリとシミュレーション
ファクシミリは、画像を遠隔へ送信できる機器です。ファックス (fax) と省略されることが多いかと思います。「模擬実験」を意味する英単語 simulation にも共通する語源が含まれています。
bank は「棚」
「銀行」を意味する bank の語源は「棚」です。「棚」には物を「積み重ねる」ことができます。「銀行」はお金を「積み重ね」る場所です。bank は「土手」を意味したり、bank of clouds で「積乱雲」を意味します。「土手」は土の「積み重ね」です。積乱雲は雲の「積み重ね」です。
おつぎは?
いかがでしたか。「語源って面白いかも」と感じていただけたら嬉しいです。
さて。実は語源には「かたより」があります。よく出る語源があればそうでないものもあります。『よく出る語源』では出てきやすい順番に語源を並べました。手っ取り早く身につけたいかたにおすすめです。
英単語を検索
語源を検索
語源クイズ
お知らせ
語源のつぶやき
-
ornament は orn「整える」ment「こと」が語源で、「整えるもの」と解釈でき、「装飾品」を意味します。 https://t.co/CYUVNPur3i
-
語源 atmo「蒸気」を含む英単語には、atmometer「蒸発計」、atmospherically「大気に」、atmology「蒸発学」があります。 https://t.co/GAsZW7zbbS
-
nomination は nomen「名前」ation「すること、するもの」が語源で、「名前を呼ぶこと」と解釈でき、「指名、ノミネート」を意味します。 https://t.co/KDt5uk1C23
-
【クイズ】プロローグ (prologue) は pro「前の」logue「談話」が語源で「最初の話」を意味します。反対はエピローグ (epilogue) です。それでは monologue の語源は何でしょう。答えはこちら。 https://t.co/ZnHTBeZKTS
-
fear は feraz「危険」が語源で、「危険を恐れる」と解釈でき、「恐れる」を意味します。 https://t.co/nhWAwjoWBO
-
influx は in「中へ」flu「流れ」が語源で、「流れ込むこと」と解釈でき、「流入」を意味します。 https://t.co/4Pw0Vw2QQ1
-
語源 tom「切る」を含む英単語には、atomism「原子論」、atomize「原子にする、粉末にする」、atomizer「霧吹き、噴霧器」があります。 https://t.co/mXRlKiK57C
-
deactivate は de「否定」act「行動」ive「のような」ate「する」が語源で、「行動できないようにする」と解釈でき、「非活性化する、停止する、無効にする」を意味します。 https://t.co/sgUS6jgfob
-
『The Reading Book』(BTB Press) 2020 年度より、岐阜大学の教科書に Gogengo! を掲載いただいています。こちらの教科書は一般向けにも販売されています。 https://t.co/9L15a1DAd3
-
data の語源は「与えられたもの」と解釈でき、information の語源は「心に形づくられる」と解釈できます。data が information に感じられると学びはたのしくなるのかもしれません。 https://t.co/CYhBcQWNEa
-
grief は gri「重い」が語源で、「精神的に重くなること」と解釈でき、「悲しみ」を意味します。 https://t.co/nyuscUpF2a
-
語源 aster「星」を含む英単語には、disastrous「大災害の、悲惨な」、asteroid「小惑星、ヒトデ」、astronautically「宇宙航空学的に」があります。 https://t.co/n7XoOpKeGi
-
monotonous は mono「単一の」tone「音、調子」ous「のような」が語源で、「音や調子が一定であるような」と解釈でき、「単調な」を意味します。 https://t.co/u2y38v28l6
-
『ねこさんの英単語の語源ものがたり』では、ものがたり形式で語源をお話ししています。 https://t.co/h6Ulyt0xUK
-
understatement は under「下に」state「立つ」ment「こと」が語源で、「下の位置に立って言うこと」と解釈でき、「控えめな表現」を意味します。 https://t.co/rLnmg6iYZ7
-
語源 horr「ぞっとする」を含む英単語には、horrible「身の毛もよだつ」、horrific「ぞっとするような」、abhor「忌み嫌う」があります。 https://t.co/CKdXzy74Mz
-
innovate は in「その方向へ」nov「新しい」ate「する」が語源で、「新しくする」と解釈でき、「革新する」を意味します。 https://t.co/332Cb6Plvg
-
【クイズ】遊園地のアトラクション (attraction) の語源は at「その方向へ」tract「引っぱる」ion「もの」とされ、「心を引きつけるもの」と解釈できます。では、車のトラクターの語源は何でしょう。答えはこちら。 https://t.co/28ZUtzQwvm
-
neglect は neg「否定」lect「集める」が語源で、「集めない」と解釈でき、「無視する」を意味します。 https://t.co/olMzteddEX
-
語源 penta「5 つの」を含む英単語には、pentagonal「五角形の」、pentagon「五角形」、pentathlon「ペンタスロン」があります。 https://t.co/A0OhCs6FZ8
関連情報
『Gogengo! User Group』
ユーザーグループです。更新情報やイベント情報が配信されます。
『語源の広場セミナー』
語源のたのしさや Gogengo! のことをお話しします。現在は中止しています。